イガイガの丹沢放浪記

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help RSS 岩水沢から蛭ヶ岳西面探訪

<<   作成日時 : 2008/07/06 21:00   >>

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画像雨で山へ行けないときは近くの図書館に出向くことが多いのだが、先日、何気なくながめていた丹沢関連の本に、丹沢の草分けの一人、坂本光雄氏の「神之川略図」という概略地図が載っているのを目にした。
それは、昭和10年発刊の「ハイキング」に掲載されたものを縮小し、転記した目立たない図なのだが、神ノ川流域の尾根や沢の当時の呼称などが記されていて非常に興味深い。
さらによくみていると、地蔵尾根とミカゲ沢ノ頭北西尾根を結び、蛭ヶ岳山頂を踏まずに西面をトラバースする径路が破線で示されている。

蛭ヶ岳の西側斜面といえば崩壊したところも多く、仏谷や小谷といった厳しい沢の源流部がある急峻なところである。
とてもそんな径路があったとは思えないが何事も確認してみないとわからない。
ちょうど岩水沢を遡行するつもりでいたので地蔵尾根へ詰めたあと、蛭ヶ岳の西側斜面の様子を探ってみようと思う。




神ノ川を訪れたのは久しぶりだ。
台風9号によって神ノ川流域が壊滅的な被害を被ったあと、その惨状を目の当たりにして以来である。(2007.9.22記事)
その後の復旧状況が気になっていたが、きょう来てみれば通行不能だった林道は復興され、以前の神ノ川林道車止めゲートまで進み入ることができた。

ゲートにはいつもより早い5時半の到着だが、この時間にしては車の数が多い。
先着していた人に聞いて見ると、きょうは「北丹沢12時間山岳耐久レース」が行われるということで、その関係者の車が多いようだ。
山との係わりは人それぞれだが、歩くだけでもたいへんな山岳地帯を走るという人たちがいるのだから恐れ入ってしまう。

岩水沢のある広河原までゲートから45分、ここも台風直後は濁流に押し流されてきたガレに埋まり、すっかり変貌していたが当時ガレの下を流れていた水流も復活したようだ。
しかし、削りとられた川岸やガレに埋まった河原の樹木に、あのときの爪跡を見ることができる。

画像神ノ川を奥へとすすみ、目立たない岩水沢の出合は緑色のドラム缶が目印だったのだがそれも流失してしまい、今は左岸にできた地蔵尾根への新しい取付きの黄色い案内板が目印になっている。(写真/右)

出合から狭く急な沢となり、左に曲がって登っていく。
沢の中は木々が覆いかぶさり、陽が差し込まないので昼でも薄暗い。

そして、すぐに岩水沢のF1が現れる。(写真/トップ)
前方に立ちはだかる壁の右端を勢いよく流れ落ちる10mほどの斜瀑で、流れの左側がホールドも豊富でどこからでも登れる。
落ち口にでるところで少し濡れるが問題ない。

画像すぐ上にはF2とされている5mのナメ滝が続き、登るまでもなく通り過ぎる。(写真/左)
岩水沢は短く急な沢でずっと登って行く感じだが、登って越えて行く滝の数は意外と少ない。

画像しばらく急なゴーロを登って行くと沢は左に曲がって続いているが、左岸から勢いよくF3(15m)が滑り落ちている。
以前は左側の岩肌にも水の流れがあったと思うのだが、滝の落ち口に岩がつまって流れが変わってしまったのか、だいぶ印象が変わってしまったように思う。

本流はF3のある方なのでこの滝を登らなければならない。
滝は登れないが、流身右側の岩と岩壁の間の岩溝が登りやすく、F3を左に見ながら滝の上にでることができる。

画像F3の上には、またすぐに2条の流れのスラブの5m滝が続く。
ここは流れの左側が簡単に登れ越えていく。

ここをすぎると観るべき滝はほとんどなくなってくる。
しばらくでガレに埋まった1:2の二俣になり、右に行きたくなるところだが、左を選んで進んでいく。

画像ガレのつまった沢を登っていくと最後の三段のナメ滝になり、そこを越えていくと水量も減ってくる。

やがて前方の岩壁の裂け目から湧き水が噴出し、流れになって落ちている場所にでた。(写真/右)

ここが岩水沢の岩水沢たる由縁の場所だろう。
これだけ大きく噴出している湧き水はあまり見ることがない。

もうここまでくれば源頭は近い。
そのまま沢をつめ、たどりついた絵瀬尾根から右に少し登って地蔵尾根に登り着いた。



次なる課題の蛭ヶ岳北面径路だが、等高線もない概略地図に描かれていただけなので、どこが入口となるのかさっぱりわからない。
今までの経験上、トラバース道の入口は鞍部や尾根の傾斜が落ちて平らになったあたりが多いように思う。
自分なりに地形図を検討してみると、地蔵尾根の1,230m前後から水平にトラバースするのがよさそうに思える。

地蔵尾根にたどり着いた地点から少し下っていくと、ルートがやや左に向き、平らになる場所がある。
少し周囲を探ってみたが、トラバースするとしたらおそらくここしかないだろう。
小谷側の斜面に足を踏み入れトラバースを開始する。
踏み入ってみると意外と歩ける。
道形とまでは言えないが踏跡が残っていて、おそらくは獣たちの通り道なのだろうが、もしかするとここが地図にあった径路の名残なのかもしれない。
そう思って歩いていくと、はじめはドキドキだったが、次第にワクワクに変わってきた。

トラバースでは避けて通れない沢の通過も、うっすら残る踏跡を追っていき無理なく沢を横切ることができた。
崩壊地の通過では神経を使い慎重に横切るが、ガレがガラガラと音をたてて転がり落ちていく。

自分の高度計で1,245mあたり指している斜面を水平に歩いているが、きょうは正確な位置での高度調整をしていないので±10mくらいの誤差はあるのかもしれない。

いくつか枝沢や枝尾根を通り過ぎているうち、自分の正確な位置がわからなくなってきた。
小谷と仏谷に挟まれた地域のどこかであることはわかっているのだがどこだか自信がない。
小谷と仏谷の中間尾根は一度歩いているので、その尾根を通過するときはわかるだろうと思っていたのだが、似たような尾根ばかりで確信がもてない。
こんなときGPSでもあればよいのだろうが、今のところ持ち歩くつもりはないのであきらめる。

そのうち水の流れのある深い谷間にぶつかった。
小谷か?仏谷か?それともその支流か?
情けないが自信がない。
今までの沢は慎重に行けば通過できたが、この沢は簡単に降りられない。
どこの沢なのはっきりわからないが、おそらく小谷の源流だろうと少し下流に下りどうにか対岸に渡った。

何しろ派生する枝尾根が多く油断するとそちらに引き込まれてしまい、どうしようもない崖の上に立っては尾根を登り返す、そんなことを何度か繰り返しているうちにすっかり体力を消耗してしまった。

水も底をついてきて、腹も減ってきた。
きょうは長丁場になることも予想できたので、コンビニでおにぎりを買ったのだがマヌケなことに車に置き忘れてきてしまった。
食べ物といえばザックの中に非常用のカロリーメイトが1本あるのみ。

空腹と脱水症状での足場の定まらないガレ場の急登が、こんなに体が動かず辛いとは思わなかった。
せめてさっきの沢で水を汲んでおけばと大反省である。

紛れ込んだ枝尾根から脱出できず、もがいているうちに大きな沢がはるか下方に見えてきた。
雰囲気から金山谷か仏谷なのだがどちらかはっきりわからない。
かなり山肌を下っていかなければならないが、何とか降りていけそうなのでルートを見極めどうにか降り立った。

とりあえず沢の水で喉を潤し、下流へ向かって歩いてみる。
しばらく歩いていくと前方がすっぱり切れ落ち、周りを断崖で囲まれた滝の上にでてしまった。
上から覗き込むと、どうも何度か訪れたことのある仏谷の大滝のようである。
これで自分の居場所は確定できたが、この滝が降りられない。

大滝見物に滝下までは何度か来ているのだが、四方を崖で囲まれ越えるルートが見出せず、その先には行ったことがなかった。
越えられなかったということは降りられないということだ。
ここを降りれば、どうにか明るいうちに戻れることはわかっているのだが、道具をもたない自分が確保なしで挑戦するような滝ではない。

一箇所途中までは降りられる場所をみつけたが最後の10mくらいが危険だ。
右岸を登って尾根にでることも考えたが、急斜面をかなりの距離登らなければならず体力のない今ではかなり厳しい登りになりそうだ。
仮に登ったとしても、そのあと日没までに山をくだるのは難しい。
ここで疲れた体で無理するよりは明日の朝、安全なルートで帰ろうと真剣にビバークを考え、覚悟を決めて適地を探していると遠くで雷鳴が聞こえてきた。
雨に降られてはたまらない。

画像時刻は16時30分、今この滝を通過できれば、ギリギリ明るいうちに神ノ川林道にたどりつける。
ザックの中を再度確認すると、幸い5mのロープがあった。
手持ちの5mシュリンゲと結び合わせ10mの長さが確保できた。
もう一度挑戦して、だめならビバークだ。

滝の落ち口左岸の崖からロープの端を崖に生えている細木に縛りつけ、懸垂下降でかっこよく降りていきたいところだが、誰もみていないのでかっこ悪くロープにしがみついて下降開始。
今度はどうにかこうにか滝下にでることができた。

滝下から見上げる大滝は、いつもにも増して水量が多いように思う。
降りて撮った写真は、手ブレでピンボケになってしまった。

これで緊急ビバークはしなくてすんだが、のんびり滝見物している場合ではない。
危険なところはないが、この先まだまだ行程は長い。
このあと通過が多少問題になるのは仏谷のF1くらいだが、右岸に残置ロープがあるので大丈夫だろう。
くたくたで休憩したいが、暗くならないうちに沢を下らなければならない。

画像
広河原に着いたときは18時をまわっていた。
幸いこの時期は、まだ十分に歩ける明るさだ。
林道に上がって一休みし、とぼとぼとゲートに向かう。
途中の孫右衛門の湧き水のうまかったことといったらない。

車にたどりついたのはちょうど19時だった。
朝から13時間以上歩き回り遭難ギリギリ、大反省の一日だった。

今回は蛭ヶ岳北面径路の完覇はならなかったが、次回はミカゲ沢ノ頭側から挑戦し、ぜひとも地蔵尾根とつながるルートを探しだしてみたいと思う。
2008.7.6

《今回のルート》国土地理院1/25000改

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
イガイガさん

危険な長時間山行お疲れ様でした。
遭難もどきに留まり、取り合えずご無事にご帰還できたことおめでとうございます。
安全と冒険心との微妙なバランスがあってこその楽しみだと思いますが、お互い真の遭難にだけはならないよう楽しんでいきましょう。

歩かれた界隈非常に興味ありますが山越えアプローチになり体力消耗と時間が心配でなかなか訪問できずにいます。日が長く且つ涼しい時期に体調ベストでいづれ訪ねて見たいとは思いますが、どうなることやらです。
AY
2008/07/09 00:34
疲れました。
暑さ、空腹、ガレ場歩きで脱水症状。
斜面を歩きながら何度もへたりこんでしまいました。

遭難もどきというよりは完全に遭難です。
無謀な中高年登山、山をなめるな!という声が聞こえてきそうです。

反省(-_-;)
イガイガ
2008/07/09 05:26
イガイガさん
おひさしぶりです
1年ぶりにコメントさせていただきます
今回、「ほぼ遭難」されたとのことですが、私は未熟者ゆえ、1年前の6月に「完全遭難」しました
「地蔵平から岩見沢出会い」に降りようとして、途中「小谷〜仏谷」に出て、イガイガさんがロープで降りたと思われる滝が、どうしても降りれないので、「地蔵尾根」を登り返して、疲労困憊、ヘロヘロになって「広河原」に出てきた時には、暗くなっていました
それでも林道を歩いて行けば、駐車した「日陰沢橋」まで帰れるのですが、広河原から林道に登る場所がどうしてもわからず、河原をウロウロして体力が尽きて「野宿」することに決め、河原の流木を集めて焚火をして夜が明けるのを待った経験をしました
イガイガさんのコースは、私なんかとても踏み込めない所ばっかしですが、「丹沢徘徊名人」でもこんな事もあるのだと、変な「親近感」を持たせていただきました
あと、4月20日に「AY」さんと「キューハ大滝」でお会いしました
すみません、自分のことばっかし長くなってしまいました
houei
2008/07/09 21:45
houeiさん、久々のコメントありがとうございます。
AYさんがキューハ沢で会われたというのはhoueiさんだったんですね。

私はこんなブログを書いているので、山の達人のように誤解されることが多いのですが、基本はど素人です。
山の知識もなく、恐いもの知らずに山に突っ込んでは跳ね返され、もう一度突っ込んでようやく覚えた山です。
そんな訳でプチ遭難はしょっちゅうしてますよ。

houeiさんの遭難の件、「仏谷の大滝」から地蔵尾根に登り返すというのは、地形的に無理なような気がします。
おそらくhoueiさんが降りられなかった滝というのは「小谷の大滝」だったのでないかと思います。
ここは右岸を登れば地蔵尾根にです。

まあ、どこであろうとビバークはしたくないですね。
イガイガ
2008/07/09 23:18
イガイガさん

拝見しました。読んでいる私の方でもハラハラ・ドキドキに
なりました。十分わかっている事なのに良くおやりになります!
何はともあれ無事のご帰還おめでとうございます。

5m+5mで10mのお助けロープ。これで間に合って良かった
です。食料忘れたのは辛かったですね!
誰しも学習を重ねて行きます・・。良き糧となさって下さい。

岩水沢は私のレベルでも登って行かれそうですか・・?
行かれそうなら地蔵尾根下降で周回してみたいです。

刺激的な山行UPありがとうございました。
M-K
2008/07/11 02:12
M−Kさん

おなじような山歩きをされている方は、多かれ少なかれこんな経験をしているのではないかと思います。
やっていることが、あんまり褒められたことではないので、公開すべきではないのかしれませんが、皆様への警鐘ということでお許しください。

岩水沢ですが、問題となるようなところはF1とF3くらいだと思います。
F1は見た目よりも簡単で左側が階段状に登れます。
F3は慣れていないと少し高度感があるかもしれませんが、ホールドはしいかりしているので三点確保を意識して登れば大丈夫かと思います。
いずれにしても難易度はぐっと低くなるので沢靴を持参してください。

くれぐれも無理はしないようにお願いします。
イガイガ
2008/07/11 07:04
イガイガさん掲示板お借りします。

houeiさん
その節は、ありがとうございました。
あれからまだエンジン訪ねに行ってません。

houeiさんも丹沢の徘徊やら放浪やらお○○さん歩きの楽しさに嵌ってしまったお仲間とお見受けいたしました。
また、どこか藪の中でお会いするのを楽しみにしております。
AY
2008/07/12 00:00

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