玄倉・大ノ山沢のゴルジュ 再訪

画像

トップの写真は、大ノ山沢ゴルジュの核心、落差12mのF4。圧迫を感じるほど狭い廊下の突き当たりに水を落とし、垂直な岩壁が行く手を阻んでいる。大ノ山沢の流程は短く、ガレだらけで遡行の価値はあまり見いだせないが、出合奥の急峻なゴルジュは人をよせつけず、連瀑は滝好きの心をくすぐる。

玄倉駐車場[6:55]…玄倉林道…大ノ山沢出合[7:10]…大ノ山沢F1[7:25]…大ノ山沢ゴルジュを孤軍奮闘…仕事道…大ノ山[10:35]…野嵐…千代ノ沢園地[11:55]…湖岸道…玄倉川橋…玄倉駐車場[12:28]

玄倉無料駐車場へは本日一番乗り。周りにまだ人影はなく、湖面もおだやか、
丹沢湖の向こうには、白い頭をのぞかせた富士山が観えていた。

画像

玄倉林道に入り、第一発電所をすぎて少し先にある、開けた中州が大ノ山沢出合、
ここがきょうの目的地である。

画像

20年前の8月、避難勧告を無視してキャンプを続けた18名が増水した玄倉川に呑まれ、
13名が死亡したあの悲惨な水難事故の現場が大ノ山沢の出合だった。
ここを通るたび、テレビに映し出された、あの濁流の映像が思いだされるが、
普段はウソのようにおとなしい流れである。

玄倉林道から事故現場の中州に降り、玄倉川を横切って押し出されたガレの山を登っていく。
岩屑だらけなので水の流れはなく、やがて右前方から水の流れる音が聞こえてきた。
近づいてみると、断崖を割ったような谷間から水が流れだし、3mのF1を前衛に、
薄暗い奥にはトイ状の三段F2が流れ落ちている。

威圧感で、なんだか怖そうだが
はて、ここは前回、どうやって越えたんだったかな…
まったく思いだせない。

画像

周囲は切り立った崖なので、まるで手に負えない。
左手の斜上するザレ窪が、登れそうにみえるが、登った先がどうなっているか分からず取り付けない。
とりあえず、F1を水流沿いに登って越えてみると、遠目に怖そうだったF2が登れそうにみえてきた。
濡れるのさえ気にしなければ何とかなりそうだ。
さっそくチャレンジ、下段に取り付いて、二段目からは突っぱり気味に攀じ登り、
最後は這い上がってF2を抜け出した。
でも、思ったより濡れてしまい、おーツメてぇ~

画像

F2を越えると、沢は左を向き、6mのF3が、ゆるい傾斜をもって流れ落ちている。
そして、この光景を見て思いだした。
そうだった。前回は、F1、F2の登攀はハナから諦めて、
少し戻った手前の山肌を大きく迂回し、F3の上からロープで下降したのだった。
どうりで登った記憶がないわけだ。

F3は、水流の左にしっかりしたホールドがあり攀じって越える。
画像

その先で、垂直な崖に囲まれた狭い廊下になる。
正面は、12mのF4が立ちはだかりドン突きの袋小路。
前進不能、脱出も困難である。

画像

前回は右岸からクライムダウンしてきたので、残置したロープで登り返したが、
今回は滝を登ってきたので登れない。
F3の落口右岸の壁に、若干傾斜のゆるいところがあり登れそうだが、
やはり、確保なしで登るにはリスクがある。
5m上の灌木にロープが掛けられないか、
カウボーイのマネをして投げ縄をこころみるがまるでヘタクソ、何度やっても空振りなので諦めた。

登れなければ、しかたがないので降りるしかない。
F3はホールドがしっかりあるので下降も問題ないが、
F2はスタンスが見えず、足に目がないと降りられそうにない。
どこかにロープが掛けられないか探してみると、落口の真上に倒木が引っかかっていて支柱になりそうだ。
ただし、折れたり、外れたりしては大変だ。しっかり確認してロープを掛け、確保しながらF2を下降した。

出合に戻り、前回の要領で右岸の山肌をたどって、先ほどまでもがいていたF3右岸の上部に立った。

画像

ここはF4の落口よりも少し高い位置で、F4が見下ろせて上部に続く滝も覗ける絶好の観瀑ポイントだ。
写真は木漏れ日が差し込み分かりにくいが、落口の上には滝が続いている。

もちろん眺めるだけで、F4の落口先に行けるわけではない。
ふたたび仕事道に戻り、ゴルジュが終わる上流の堰堤までたどったところで沢に降り下流へ向かう。
いくつか滝をくだって、さきほど観瀑ポイントから眺めていたF4の落口まで下降していく。
実際はF4の落口には立てず、その上のF5の落ち口、下に見えているのがF4の落口である。

画像

ふたたび上流に戻りながら、今下降してきた滝をみる。
F6、ここは簡単。
画像

3mのF7も問題なし。
画像

大ノ山沢ゴルジュの最後の滝、8mのF8は水流左のヌメった岩場を登る。
画像

ゴルジュが終わって堰堤を越えると二俣になり、どちらもガレに埋もれていて楽しみはなさそうだ。
本流筋の左の沢に入り、少しさかのぼったところから左手の植林帯に取り付いて
急斜面に付けられた植林道を大ノ山までたどっていく。

画像

大ノ山の標高点で休んでいると人の声が聞こえたような気がした。
林業関係者が入っているのかなと思っていたら、仕事道をハイカーがゾロゾロと登って来るではないか。
先日も、日影山で団体さんをみかけたが、こんなマイナーどころでも大人数で登るんだと感心する。
一緒になったところで聞いてみると、11人の大所帯だそうな。
これから“ニシタン”に向かうといっていたが、
おそらく大杉山から弥七沢ノ頭の方面に向かうということだろう解釈し、
方向がかぶらないよう、行き先を変えることにした。
といっても、きょうはロングをやるつもりはないので短めに、
千代ノ沢園地までの尾根伝いを楽しむことにした。

大ノ山と遠見山の鞍部から、西にトラバースする踏跡をみつけ、一本隣の尾根に乗り移った。
そこから、南西に続く歩きやすい尾根筋をたどっていく。
ここは、大野山や富士山も望めて、一人歩きが楽しめるところだ。

丹沢湖の向こうには、みんながよく知るメジャーな大野山。
画像

時季外れのミツマタに散り際のサクラ、そして咲き始めたミツバツツジが 同時に見られる、おかしな年だ。
画像画像

野嵐の560m圏ピークで尾根筋は二手になり、右手の南西に向かうのだが、
ここから千代ノ沢園地にピッタリ下降するのは意外と難しい。
眼下に丹沢湖は見えているし、大仏大橋も間近に見える。
そのまま下降していけば大丈夫だろうとナメてかかると、けっこう間違える。
ここは出だしの方角が肝心で、微調整しながら下降し、千代ノ沢園地の駐車スペースに降り着いた。
やはりピッタリ降りられると気持ちがよい。
普段はほとんど人を見かけない園地だが、きょうはお弁当広げて楽しそうな人たちでいっぱいだ。
こっちはヘルメットとロープをぶらさげ泥だらけ、なんだか場違いで居心地が悪い。
即刻その場を離れたが、湖岸道もお花見客が大勢散策していて、ここも落ち着かない。

足早に湖岸を歩いて戻ってくると、朝方はひっそりしていた駐車場周辺もけっこうにぎわっている。
ツアーバスが数台待機していて、湖岸を周遊してきた客の帰りを待っているようだった。
ユーシンブルーは売りにならないし、ツアー会社もいろいろ企画しているのだろうな、きっと。

丹沢湖周辺の山々もようやく笑いだし、大ノ山沢は厳しかったけれど、ちまたは穏やかな春の一日でした。

 2019.4.13(土)

《今回のルート図》

この記事へのコメント